氷壁をイメージしたトップライトは植村直己の生涯がプリントされ、夜はライトアップされます
氷の裂け目クレバスをイメージした入口スロープ
雪洞をイメージした展示室の入口、展示室内部は原則撮影禁止です
氷片をイメージした図書コーナーと右側の黒い棟が増築された新館
植村直己冒険館
Uemura Naomi Memorial Museum [基本情報]
私は名前はおろかそんな偉大な人だとは知らず、雑誌に載っている建築を手当たり次第に探訪した中の一つでした。
駐車場から建物らしきものは見えず、ただ木立の中に一筋ガラスが水平に見えるだけです。
案内看板を頼りに入口にたつとコンクリートに杖(ピッケル)が埋まっておりこんな細工も出来るのかと珍しがる。
長いスロープを降りるに従って、打ち放しの壁が視界を遮っていき下りきった頃にはもう空が見えるだけである。
受付を済ますと最初に上映ホールに案内される。私一人の為にと恐縮するがすぐに映像に引き込まれる。
ここ日高町で生まれ、5大陸最高峰を世界で初めて登頂し北極点への単独到達などの偉業の果てに、
冬のマッキンリーで消息を絶つという凄まじい人生に息を呑む。
その中で一番記憶に残る言葉が「俺の人生って何だろう」と。数々の困難を越えて目指した場所に辿り着きながらも自問している様に心を打たれる。
展示室を巡って再び長い通路に戻る。遠くに出口らしきものが見えるが、相変わらず両側は高いコンクリートがそびえ立つ。
トップライトから入ってくる光も頼りなく少し肌寒い。この壁に開口さえあれば暖かい太陽も美しい自然も見渡せるのに。
前か後ろにしか動けない不自由さがクレバスに落ちるとこんな感じなのかなと想像させる。
出口を出て先のテラスまで進む。目の前に山や池、木々が広がり冷えた体に太陽が心地よい。
足下には植村直己が訪れた世界への方位盤が埋まっている。
「俺の人生って何だろう」と人生始まったばかりで何も成し遂げてない我が身を案じる。
それでも先程までの窮屈さは無くなり、自分の世界がちょっとだけ広がったみたいだ。